つまるところ、どうにもならない事というのはいくらでもある。

どれだけ疲弊していたのか、ほぼ丸一日眠ってしまっていた。

 

 

 

 

昨日7月4日は目の回るような初夏の一日。

朝10時前、この時期らしい土砂降りに濡れながら田舎町に向かう三人は、夜に控えたライブ機材でぎゅうぎゅうの車内で久々の再会を喜んでいた。

練習の前にまずは腹ごしらえと、地元のパン屋で各々好きなパンと瓶のジュースなんかを手に取り今日の予定を話す。友人たちと地元の店にくることも珍しいので新鮮な気持ちになる。

 

実家のガレージに機材を運び入れるという一仕事をおえると、各々その辺から(車庫の二階は物置なので色んなものが雑多に転がっている)椅子になりそうなものを探して座り、休憩をとる。栓抜きで蓋をあけたばかりの瓶飲料からは駄菓子に似たチープな味がするが、こうして練習前に集まって飲むに限ってはそのチープさがいい塩梅に気張ったこころを和らげてくれた。

 

 

三人で合奏するのは卒業ライブ以来、さらに今回の曲に限って言えばおそらく冬ライブが最後か。つまり既に半年以上もの月日が経っていたが、一度はじめてみるとなにも変わらずといった具合にするりと通せた。もともとその場の気分で好き勝手できるような曲にしていたし、各々それに合わせられる技量があると認めている人達なので心配は無用だったことを思い出す。

 

雨は変わらずに塗炭の屋根をつよくうつ。演奏していた曲も、同じような雨の日にうまれたからかふしぎと気持ちよく、じめじめと薄暗い空気が音ひとつぶずつにまとわりついていく。ときどきそれを中和するように瓶にたまった炭酸に口をつけている。

 

 

 

 

昼時をすぎそろそろ曲の出来も纏まったころ、実家の自室に場所をうつし試験的にレコーディングをしてみることにした。フルセットのバンドと違い、晴れたら公園でふらっと練習できたり、家でお茶などすすりながら音録りできたりする所がすごく好きだ。一階でうたた寝をしていた父を起こすことなくカホンとパーカッションのレコーディングは終わり、またバタバタと車に機材を戻し始める。余裕を持って朝に集まったはずが、会場入りの時間はすぐそこまで迫っていた。

 

また雨に打たれながら、車はもときた道を戻ってゆく。