二日ほど前、すこし離れた山奥の公園を訪れた。

 

 

以前の記事で書いた、おれがまだ一歳ごろに両親と訪れた場所だ。

父の運転に3、40分ほど揺られるとすぐに生い茂った草木たちが出迎えてくれる。公園と名はつくものの、それといった遊具などは見当たらず、広場のような作りだ。名水百選などにも選ばれるほど水質の良いそこは、心なしか空気も澄み渡ってみえた。

 

もちろん生まれて間もないその頃の記憶は残っていないし、母も殆ど覚えていないような様子だったが、父だけが嬉々とした様子で昔訪れた時の情景を伝えてくれる。

 

レストランと名水にまつわる資料館が一体的になった特徴的な建物は、やはり時節柄閉じたままだった。休日の真昼間、いわば一番賑わっていてもおかしくない時間帯に自分たちを含め6,7人しかみえないこの状況もウイルス騒動によるものだろうか。傍らには小さな屋台がおり、でかでかと「新発売!」と書かれた古めかしい紙が貼ってあったので思わず笑ってしまった。次来た時もあってほしいな、と漠然と思う。

 

 

 

 

端々で動画をまわした。1歳の頃のホームビデオのように、見返して盛り上がれるように。

母が湧き水にふれてあまりの冷たさに驚く場面や、父がはりきって「こうやるんだよ」と独自の鯉の餌やりを披露するシーンも、文字をいれて色を補正して、12分ほどの動画にした。まだタブレットの操作に慣れない父に教えつつ、動画を送る。父がしばらく夢中で見ていたのが嬉しかったり気恥ずかしかったりで、そそくさと部屋に部屋に戻ってしまったが、いい休日だった。

 

そういえば、帰りに寄った道の駅で食べたラーメンがやけに美味しく感じた。身の周りには東京と比べても勝るようなラーメン屋が多くあるので、こういうところで頼むのは珍しいのだが。久々に両親と外食したからか或いは久々に陽の光を浴びながらしばらく歩いたからか、思わず動画のワンシーンに挿し込むほど美味しかった。

 

 

疲れて黙りこくったまま、うとうとと山路を下って、いつもの町がみえる。

次が何年後かわからないが、またこういう日があればいいな。と ぼんやり思う。