心の病気、不調の類において特にたちが悪いのは、目に見える傷痕が残らない点だなと思う。血を流している者に大体の人は優しい。私も自分から血が出ていれば絆創膏を貼ってあげたいと思うし、酷ければ医者にかかりたい。

精神の怪我にはそれがなかった。大体悪い時にも波があって、どれだけ鬱で壊れそうでもパニックで声が止まらなくても、数日眠ってピークをやり過ごしたら落ち着いたように見えてくる。理由もよくわからず、傷もないので 気のせいだったのではないかと思えてくる。また自分を甘やかして休んでしまった、という罪悪感がふつふつと沸いてくる。追われて逃げるように作業に戻る。繰り返して、医者にかかるようになった頃にはじめて、徐々におかしくなっていたことを自覚した。もうそれはずいぶんと遅かったが。もし手にとれたなら私の心は血まみれだったろうか。或いはけろりとしていただろうか。それがわかるだけでも少しは手当てをしてやれたろうに